探していたのはセリカだったのに
私は以前、知人に頼まれて3代目のトヨタ・セリカを探していました。中古車店を何軒も回っている中で、偶然目に入ったのが1台の964カブリオレでした。
外装は日焼けで白化し、エンジンもタイヤも外されている状態です。お世辞にもコンディションが良いとは言えない一台でした。普通であれば素通りしていたはずなのですが、なぜか気になって店員さんに聞いてしまいました。「これ、売り物ですか?」。返ってきた答えは「買ってもらえます?」。その場で即決してしまい、納車までは約2か月かかりました。
セリカを探していたはずが、気づけば964カブリオレを買っていた。振り返ってみても不思議な出会いですが、こういう一目惚れのような出会い方こそ、古い車との付き合いではよくあることなのかもしれません。状態の良い個体を探して慎重に比較検討する、という買い方もあるとは思いますが、私の場合はいつも、理屈よりも先に心が動いてしまいます。
帰り道で起きた小さなトラブル
納車されたその日、私は意気揚々と乗って帰りました。しかし帰り道、油温が上昇し始め、さらにティプトロニックのシフト表示が点かなくなるという不調が重なり、その場で引き返すことにしました。
古いポルシェと付き合うというのは、こういうことの連続です。整備されて「大丈夫」と思っていても、走り出してから不調が出ることはよくあります。せっかく手に入れた一台が、納車初日から不安を抱えたスタートになったわけですが、この一台も、そんな付き合いの始まりでした。
親父さんの一言で見方が変わった
その車を持ち込んだ先は、いつもお世話になっている空冷専門店の親父さんでした。状態を見てもらうと、一言「これはいい車や」。さらに「スポーツシート付いとるし、総革張りや」と教えてくれました。
外装の日焼けや機関の不調で頭がいっぱいだった私にとって、この一言はとても大きなものでした。見た目の印象や不調ばかりに気を取られていた自分に気づかされた瞬間です。車の本当の良さは、こうして一台ずつ知っている人に教えてもらって、初めて分かることがあるのだと思います。
スポーツシートや総革張りといった細部は、カタログや写真だけではなかなか気づけません。実際にその車の前に立ち、シートに触れ、内装を見て回った人にしか分からない価値があります。この一台を通して、私はそのことを改めて教わりました。
「MTでなければダメ」という思い込み
正直に言うと、私はそれまで「ポルシェはマニュアルでなければ本当の楽しさは味わえない」と思い込んでいました。しかし、このティプトロニックの964カブリオレに乗ってみると、空冷エンジンの質感とオープンエアーの開放感は、ミッションの種類に関係なく楽しいものだと実感しました。
ティプトロニックという機構自体、乗ってみると想像以上に面白いものでした。シフトの感覚、エンジンとの呼応、どれも「MTでなければダメ」という思い込みだけで片付けてしまうのは、もったいないことだと今では思っています。思い込みというのは、実際に自分で乗ってみるまで、なかなか外れないものです。
これはティプトロニックに限った話ではないと思います。年式やボディタイプ、ミッションの種類について、人から聞いた評価や一般論だけで「良い」「悪い」を決めてしまうのは、もったいないことです。自分の感覚で確かめてみることの方が、ずっと確かだと私は思っています。
一台一台との出会いが教えてくれること
状態の良くない車との出会いから始まったこの964カブリオレですが、トラブルも含めて、今の私の考え方に大きな影響を与えてくれた一台です。古いポルシェには、新車にはない「物語」があります。それぞれの車に、それぞれの個性があり、それぞれの楽しみ方がある。だからこそ、型式やミッションの種類だけで判断せず、実際に乗ってみることをお勧めしたいのです。
PORSCHE GATEでは、こうした一台一台との出会いから生まれた車たちに、実際に触れていただける場所を目指しています。見学はいつでも無料です。文章だけでは伝わらない空冷の質感を、ぜひ一度ご自身の目と手で確かめにいらしてください。
見学のご相談はLINEからお気軽にどうぞ。 https://line.me/R/ti/p/@664gahzt (ID: @664gahzt)
PORSCHE GATE 代表 髙橋 広規

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